卵の殻保存同盟

落ちた鈍い殻はとてもおいしい、と思う

文章

2

 

手渡された。受け取った。ひとりのわたし。わたしの人生。
わたしは知っている。全部聴いていたよ。だからねあなたのこと見捨てない。わたしが連れていくから安心して。
砂浜に流れ着いたほしの貝殻。形は保っていない。欠片。わたしは拾って音を聴いた。
だれかのこえ。わたしのこえ。わからない。でもそうおもってしまった。
すごく切なくなった。なんでどうして。そんなのになりたかったわけじゃないのに。そうならざるを得なかった。
確かにそう、わたしのせい。わたしがそう思っていたから。別にそうじゃない方法もあったのにそれでいたから。
でもそうじゃないよ。足りなかったからそうなっただけ。べつのこえ、少しのほんのちょっぴり。砂粒程度の確かなこえ。それさえあれば絶対違った。そうならなかった。
わたしはいう。絶対いう。あなたにいう。あなたはそうじゃない。あなたはただそれだけでしか生きられないんじゃない。わたしの手をもって。わたしに着いてきて。わたしと一緒にいこう。わたしが教えてあげる。あなたに教えてあげる。ほんの少しのちょっとした小道。誰も知っているし通るけど誰も憶えていないそんな道。わたしと一緒に見ようよそしてゆっくりとただ座っていようよ。そうやってさちょっとした時間過ごそうよ。わたしもそういう時間過ごしたことあるようでなかったからさ、きみも一緒に過ごさない? 楽しいかどうかなんてさわかんないけどそういう時間ってわたしなんか好きなんだよなー。なんかぽかぽかする。いい気持ちになる。ずっと一緒に居たくなる。そういう気持ち分かるでしょ? わたしも過ごしたことないけど分かるんだそういうのがすごく大事なこと。だからさ一緒に過ごさない経験したことない同士一緒に過ごさない? わたしたちただのそれだけじゃなくて普通に手を取りたいだけで一緒にいたいだけで。それで今も話しかけているんだけど。それを理由にしていいかな? こういうの初めてだから緊張して…ご、誤魔化しているんじゃないんだからね、本当さ。だから一緒にいきませんか。わたしはただそれだけをあなたに伝えたかったのです。

なんか一気に言っちゃった。恥ずかしくないよ。なにいって言ったっけわたし。わたしこれ以上なに書けばいいのよ、なんか脈絡ないよこれ〜とはなったけど。
でもわたしはわたしに教えてあげたいの少しの砂粒を。あなたの欠片、欠けたもの。人はみな欠けているから。それを埋める方法誰も知らないから。あなたはただがむしゃらにその場を突っ走ってここまでやってきたひとだから周りが形を教えてあげないと歪にどんどん形作っちゃうからいつのまにかもうどうしようもなく進めなくなっちゃって。それでも進もうとしてでも進めなくて。あなたは死んでしまう。
そんなの嫌だから。わたしは少しだけ手を差し伸べる。ちょっとしたのだよ。でもあなたが絶対気づけるように明日に進めるように。わたしは絶対伝える。あなたがそうやって生きていっても生き続けられるように。あなたが死んだとしてもまた生き返られるように。そういうことばを、そういう欠片をあなたに手渡します。いつかあなたがそうなったときのために。わたしがいまこうやって生き返られたように。あなたにもわたしにだれかがくれた大切なことばを伝えます。あなたは大丈夫、なにがあっても大丈夫。わたしはここにいるよあなたもここにいるよ。だからね大丈夫。なにがあってもなかってもあなたはここにいるよ。だから大丈夫。どれだけ悩んでも苦しんでも安心して。あなたはここにいるから。あなたはここにいるから。だから大丈夫。