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ふにゃっ

あの星のふもと、かたちが手を振っている

文章

4 あなたと手を繋ぎたい

「あなたと手を繋ぎたい」
そういってあのこは僕の手を握ってくる。
「…やめろ」
「なんで?」
「なんでって…」
「嫌なの?」
「そんなんじゃない」
「じゃあ!!」
「俺には出来ない」
「待って」
手なんて握れるわけがない。どうして握れるというのだ。認められない。公にしたくない。恥ずかしい。
でも握りたかった。少し触れただけ。我慢できなかった。握り返したかった。ても出来ない。怖い。そんなのしていいの?
不埒と思われてしまう。誠実に。とにかく汚らしさは出してはいけない。そうじゃないと嫌われてしまう。だから握り返すなんて。
「どうしたらよかったんだろう」
わからなかった。ただわからなかった。怖い、握り返すのが。
「俺には無理だ不可能だ」
いくら仲が良くとも手を握り返すなんて不可能だ。そんなの出来るわけがない。
「どんな顔して会おう」
クリームパンでも買おうか。でも恥ずかしい。なんでいきなりあんなこと。俺に出来るわけがないじゃないか。第一俺の手は汚い。こんな気持ち悪い手をよく触ろうと。俺なら触らないこんな手。何故。
そもそもなんで俺と話せるのだ。わからない、謎だ。不思議すぎる。こんなに気持ち悪いのに爛れているのに。挙動はおかしいし声は聴きたくないし。そんなやつとなぜ一緒にいられるのだ。謎だ謎すぎる。
「嫌だ嫌だもう嫌だ」
考えれば考えるほど判らない。謎すぎる。どうしてこうなっている。おれには判らない。不思議すぎてどうしようもない。
「早く帰ろう」
いまあのことは会えない。俺には厳し過ぎる。とにかく帰らなければ。早く布団に倒れて何も考えない。とにかく考えない。


わたしは汚ない、気持ち悪い。だれとも話せない。声が気持ち悪い。行動がズレている。嘘をついてる。誤魔化している。ずるい人間。嫌になる、自分について考えると。なぜわたしはみんなと一緒に居られるの? 疎外されて当たり前じゃん。早く何処かに行きたくなる。逃げ出したい。キツかった。布団で横になっている時だけが自分であった。本当に嫌だった。全てが嫌だった。

俺はこういう奴なのになぜ存在できるのだろう。わたしにはわからない。嘘つき野郎はいらないだろう?

みんなそうなのかもしれない。うそをついていて。相手の嘘もわかっている。でも自分も嘘をついているからなにもいわない。自分に火は着けたくないから。

別にみんながそうなのはどうでもいいけど。自分に嘘をはつきたくなかった。でもなかなか出来ないそんなこと。嘘をつくしかなかった。


「なんで昨日は逃げちゃったのさ、探したよ?」
「ごめんごめんごめんなさい」
「別に謝らなくてもいいよ」
「すみませんでしたもうしませんから」
「ほんと! じゃあ」
あのこは手を握ってくる。
「…ご、ごめん。や、やっぱ…」
「なに? うそついたの?」
「うそなんか…」
「うそついてる。わたしと手なんて繋ぎたくないんでしょう。わかってるよ」
「わかってないよ」
「なんで」
「おれなんかとなんで手を繋ぐのさ」
彼女は手を離した。
「はいな?」
「な、なんで手を、、手を、つ、繋いで…くれるのさ、、。」
「なんでって」
彼女は背を向け片手だけをこちらへと差し出し振り返りざまに
「繋ぎたいからに決まっているでしょう」
と呟いた。