読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ふにゃっ

あの星のふもと、かたちが手を振っている

cd

一日一文

  鳥よけに有用的に使われるcdもかつては庶民のリズムを提示する音の帝王であった。みんな縛られる。彼はお家。起点として円を描く。いつしか溶けて忘れられてただの鳥よけ。迷信思い込み、でも放ったらかし。フリスピーにしては弱すぎる。ストレス発散にしては脆すぎる。どうでもてきとうに庭にかざられる。鳥よけというどうでもいい品。鳥はなすびを食う。うまそうに食う。つばを吐く。cdは汚れの極み。鳥たちはおばかな子に付き合っている。ただ放ったらかし。光を跳ねない。おやすみ。

森に入った。上にかつてのお城の残骸があるのだ。抜けなければならない。草と木々と虫さんたち。くまはいるか?
ただ黙々。ゆっくり少しずつ。けもの道。ひとの道。残骸をみたい人たちの道。
周り。風景。鬱蒼とした森。木。cd。Compact Disc。うっすらと汚れを受け持つcd。昔流行った音楽である彼ら。木に掛けてある。森の至る木に掛けてある。
cd。溶けたどうでもいい彼らだったけれどまるで呪術的。どこかの本にでも書いてあって少しオカルトティックな女の子が真に受けてこんな街から程遠い好きものしかやってこない場所に実行するべくやってきたのだろうか。奇妙である。なにが現れるのだろうか。なにを求めてるのかな。森は深く日はそうは木漏れない。cdはただの飾り。ファッション。別の何かの道具。
当たり前。当たり前になれば人は飛んでいきわたしたちは見えなくなる。層のはるか彼方。それが為いまの為の凌ぎで彼らは産まれた。常にそうなのか? そうして彼らは時代として生きた。音は詰まりいまや誰も知らない。無用の長物。何のために在るの? ひとはそれらしきの為に彼らを産んだ。それらしきは時代のなかで笑いそして消えていった。
でもcdはここに在る。なにが為かは想像しかできないがある。誰かがなにかとんでもなく別の何かの形として付随したCompact Disc。それらしきであることは変わらないだろう。物は嫌が応なくそれらしきなにか別のものの具象として瞬間に現れるだけだから、とんでもなくがたがた。cdになにかの生き血が入っていたとしてもただその時の凌ぎでしかなかった。もののどんどんいまのわたし。わたしの顔かわいい?
かわいい顔には詰まっている。色々な当たり前が重なり重なりわたしは彼女をかわいいと思った。通りすがりの少女はふんわりとしていた。かわいかった。
山の頂上に城の残骸。石が積んである。こんなこんな高い山のうえまでご苦労でしたな、はい。
cd。至る所にcd。ゴミだったのかな。こんな所まで捨てなければいけなかったのかな。山のうえ、お城の残骸が姿を見せるところまで必要だったのかな。そうするほど時代は必要とした。次に行くまでのステップ。ホップステップジャンプ。わたしたちはどんどん人となる。必要な必要な不要な屑を淘汰して淘汰して人へ人へ。
ゴミ。城はゴミ。城は必要だった。色々を護り利用され廃れきった先にぶち壊されいまや山のなか、でこぼこな形で僅かに存在。誰もそこに城があったなんて思わない。あったらしい。ここは城があった。栄えていた。ぼろぼろだけどね。かすれているけどね。使いきったけどね。土地の栄養は絞りきった。本当にそう?
城は死んだ。でも残骸がまだ見えている。近くに行くとあるんだよね。悲しそう。声。半端なものの末。生きているよ。これがこの街の声だ。廃れの末に生き残る次へと繋ぐわたしの声だ。
聴いた。音を聴いた。リズムを聴いた。血と怠惰としょうもなさと色々を抱え重ねそれでも何かの末に音として現した彼らの声だ。どうしようもなくすれている。いまやかつて。ここはいま。かつてのいま。続いている。ならば、ならば。僅かの重なりだからこそ血として自らに注ぎ込みそして吐く。声を吐く。山のうえ、城の残骸から叫び。わたしの街がみえる。日々を過ごす街はただの風景として存在している。山のなか頂上、その一部として認識されるわたしは叫ぶ。届け届け。どこになんてない。人に人に届け。まだ生きている。生きているんだ。誰が終わったと叫ぶ。地続きだ。全ては重なり重なり見えなくなってしまうが全ては生きている。形が存在する限りわたしは死なない。箱のなか命はいつまでもいつまでも叫ぶ。叫び続ける。それこそが声。声だ。聴け。聴いてくれ。叫ぶ。叫びたいんだ。叫ばなければならない。血は求めている。声。生きたい。生きるんだ。ただそれだけを。
わたしはこの土地を味わいましたのでまたお家へと帰ります。cdたちはここにいらっしゃいます。またね。いつか会いましょうね。はい。
木に掛けっているcd。何のためなんてわかんないけどなんかいい。
途中まで降りると車がありわたしは乗ってエンジンを掛ける。ハンドルを握る。さようなら。また来るね。そうして私は山から去った。さようなら。またね。