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ふにゃっ

あの星のふもと、かたちが手を振っている

はさみ

一日一文

 シザーマンには気をつけろ。奴と出会ったらそりゃ大変。逃げても逃げてもやってくる。ハサミの刃音響かせて。早く人のいるところ。行かねば君はちょきんだよ。
はさみはそんなに恐れる武器とは思えない。ただ陰湿な個人と個人との関係のなかで行われる恨みがはさみを狂気へと導く。
身近かつ多くには届かない。紙と髪。チョキンチョキンと切り裂いていく。パラパラ意識を失った紙と髪。地面に散らばった死たち。アーメン。
床屋に払う金はわたしを殺さないで。はさみはひとを刺す。ただ陰湿さをこころに留め増幅させる。殺せ殺せ。はさみから手を離せ。地面を響かせて。はさみに命を払え。代償だ。はさみ様へのお供えだ。美容師ははさみとの付き合いかたを知っている。理解している。はさみは理解を外れるとひとを切る。刺す。はさみ様はさみ様。はさみにお供え仏壇を。
はさみ神、讃えられ神社に座りお供えを。神よ神よはさみ神。命をあげます捧げます。神の美しきご婦人の血に染め上げられた髪の毛を切って切って切ってください。殺して殺して殺してください。神社の境内髪の毛だらけ。命を失った髪の毛を満足するかはさみさん。
切りたいから。切りたいか? わからん。
瞬間に血走る。はさみは普段眠っている。ただ人の手にかかり紙との距離が程よく定まったときに叫ぶ。血走る。切る。世界を断絶させる。それだけが生命。
はさみに神社は不要だろう。はさみは世界で祭り上げられない。ただその脅威にこころを切られた者のみはさみを信じる。神とする。その町に集まる。シザーマン。彼らは世界を闊歩する。はさみを失った土地にやってくる。いまひと走りの鮮烈を。はさみ切られるはずだったその髪を。切る。ただそれだけのために。シザーマンはやってくる。
祭りあげなくていい。信仰されなくていい。ただ瞬間の鮮烈を味あわせなさい。それだけが望み。なければくるぞシザーマン。
必要なもの。なければ街とは呼べむもの。はさみの鮮烈。街である限りはさみを手放すな。それだけがシザーマンの恐怖に狩られたものが云える言葉。
気をつけろ。シザーマンなんてやってこない。君が鮮烈を拒否しない限り。拒否するならば君の首もとにはさみがやってきて…。