卵の殻保存同盟

落ちた鈍い殻はとてもおいしい、と思う

首吊り

一日一文

自室は二階。下降りるときは窓から飛び降りる。死にたくはありませんのでベットにかけてある縄を使い下へと降りる。
「首吊りかと思ったよ」
自宅脇の倉庫でひっそりと暮らす猫がそういった。
「首吊りをよく見るの?」
猫とは話したことないけれどこの際話しちゃえ。
「こうはいいたくないんだけど」
猫はわたしを促す。倉庫にこいと。
「ほら」
首吊り死体。
「お仲間ですか」
「そうさ」
猫はただ何事もないようにみている。わたしはじっくり見る。首が垂れて長くなっていたり小便の後が今も残っていたり。
「つい最近の出来事ではないか」
「いやこれはわたしの」
猫は照れながらいう。猫も縄張り意識が高いのかしら。
「わたし猫の知識って皆無なの」
「はい?」
「だからこんなこと言っちゃ悪いかもしれないけれど猫って自殺するの?」
猫は黙り込む。
「こんな長い縄どうやって縛りつけたの。人間じゃないこれって。しかもこの倉庫ってことはさ」
いつのまにか猫はいなくなっていて代わりにお父さんが。
「何やっているんだみさき。こんなところにきて」
「、自分の家なんだからさおかしくないじゃん」
お父さんのびんたが顔を直撃する。
「ここはきちゃいけないところだ」
お父さんの左手にはさっきの猫が。
「さあ早く寝なさい。子供はお休みの時間だ」
そうして倉庫から追い出されたわたし。猫の断裂魔。呻き声。そして無。わたしはため息をつきその場から去った。玄関を開けて本だらけの階段をうまく登り自分の部屋に入っていった。
縄は切られていた。それ以外は特になんもなし。
「はあっ」
眠たいし寝よう。そうする。
「お休みなさい」
誰に? さあね。


翌日わたしはチーズがいっぱいとろけたパンを口に入れて家をでた。まだまだ急ぐ時間じゃなかったんだけど昨日の猫が気になったから。
倉庫にいく。倉庫には
「猫ちゃん…」
当たり前だけど死んでいた。
「ごめんね」
なにに謝っているんだろう。力足らずだったから? どうせ猫は死ぬのに。
馬鹿なわたし。
そう思うと死体もただの物体にしか見えなくてわたしは哀しくなる。意識を切ったらどうしようない現実が目の前に聳えていて嫌になる。
「知らない」
わたしは目を逸らして逃げ出した。今日は学校だから。遅刻したらお父さんに知らされるから。口のなかのパンも消化しなくちゃ。だから構ってらんないの。本当よ。だから許して。猫ちゃん許して。
「お願いお願い」
みさきはただ長い坂を降っていった。途中にはおばあさんが田畑をいじっていたりおじいさんが道をほうきで掃除していたりしていたが構わず走っていった。

学校ではただ何事もなく時間が過ぎる。ただ目を瞑って開けてみればいつのまにか放課後。
わたしは特に何の用もないご身分ですのでチャイムが鳴ったと同時に家に帰る。今日はあの動画の続きを見よう。ホットケーキがどれぐらいの大きさまで保てるのか些か疑問ではあるが彼らの挑戦はなかなかに凄まじく。
「みさきちゃん」
しらないおばさん。
「みさきちゃんの家の前に警察が」
わたしはただ走る。走って、そして。
「お父さん…」
お縄にかけられたお父さんがパトカーのなかに入っていく。お父さんの顔はしなしなと萎れていてもうすぐ死にそうな感じだ。
「猫を殺し回っていたそうよ」
「三歳児が見つけたんですってね」
「臭いし汚いしわたしは昔から何か怪しい家だとは思ってましてよ」
「まあ因果応報だな」
「娘さんよ。みんな静かに」
お父さんがこちらを見る。そして口を動かす。
「みさき、みさき!」
「あっ、あっ」
わたしは逃げ出す。逃げ出すしかないじゃない。どこへ、どこへいくの。
「どこもない」
そしてわたしは警察に捕まっておはなしをした。わたしは何もしていないけれどお父さんは猫を殺して更にわたしの弟も殺していてだからわたしはひとりぼっち。ひとりぼっちでなにができるんだろう。
「わたし旅にでるの」
そうしたら何か変われるらしい。
「それが為に出かけるの」
さようならわたしの家。もうわたしの家じゃないけれど。誰も見送ってくれないわたしの家。