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ふにゃっ

あの星のふもと、かたちが手を振っている

目覚まし時計

一日一文

最近は携帯が流行している。アラームね。そういう流れで目覚ましじりじりも動画のなかで消化されています。
「わたし朝起きられないの」
携帯のなかで流れています。じりじり流れています。お母さんがやってきました。思っ切り携帯を壁にぶん投げます。娘はすやすや眠っています。お母さんは娘をはたきます。ふとんをゆっさゆっさ揺らします。それでも娘は起きません。
「あなたのアラームはわたしを狂わす」
なにをいってもすんとも言わない娘はアラームを毎日朝5時に合わせ町民体操を30分やってから朝になるのって戯言。そのくせ毎日定期的アラームの轟音のなかぐーぐー電車がやってくる6時半になってもお休みで母は頭のリズムを破壊されながらケータイと娘をぶん殴る毎日。
「パスワード教えなさい!!」
「プライバシーは保護ですよ!!」
娘と母の確執は広がっていく。見かねた父は仕事帰りに目覚まし時計を買ってきた。
「これを使いなさい」
「アラームはわたしのリズム!」
娘はあほみたいに起きないアラームに拘ります。だんだん母の目に隈ができ始めます。父はため息をつく毎日です。
どうしてもどうやっても娘はこの家を出るまでアラームを流し続けます。そしていなくなった時に母は鳴らないアラームに寂しさを覚え父は一度も鳴ることのなかった目覚まし時計に郷愁の思いを駆られるのでしょう。
そういう娘も今日となっては彼氏にはたき倒される毎日でしたがその彼氏のぶん投げの容赦のなさに母の愛をしみじみと感じていたのでした。
「お母さんは狂うべきだ」
そう思った娘は毎日起きた瞬間に母の携帯に電話をかけます。そして母は出て娘を怒鳴りつけます。娘は言い返し母も言い返し周りの男はため息をつくだけ。でもその電話が彼女たちの目を覚ましていることはみんな重々承知でした。
彼女たちだけでは無く世界中で目覚まし時計がジリジリ鳴らなくなった今世でも母の声は飛び娘の嫌悪は変わらず行われています。それは確かに馬鹿げていて狂ってはいるでしょうがそれこそが年頃の娘と更年期にも等しい母が接する狂った環境に相応しい落ち着きかたなのでしょう。
目覚まし時計は世界に必要とされ別のものがその役割を担う事になっても相変わらずどこかでじりじりなり続けている。目覚まし時計は馬鹿と馬鹿とを見事に接続してくれる機器としてあほみたいに一定周期に鳴り続ける。スイッチをONにしている限り起きなさいと起こしてくれる。わたしだけで無く私たちの関係も起こしてくれる。だからいつまでも惰眠を貪る娘であってね。わたし起こすことぐらいでしかあなたと関われないから、ね。