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ふにゃっ

あの星のふもと、かたちが手を振っている

禁断の果実

一日一文

「シャングリラシャングリラえいえいえい」
ごく一般的に全裸で畑を耕すアダムくんは空飛ぶ小鳥が呟いている鳴き声にある規則性を発見しました。彼はそのことに気づいた瞬間あの忌々しい神に一泡吹かせるかと思ったのですがそんなこと全くの意味なしたこのあしなのです。されど彼はその規則性を生きた言葉として発露できるよう毎日畑を耕しながら言葉を紡いできたのです。そうこうするうちにアダムは確信してきました。シャングリラ。これこそ神に効くスペルだと。
「そんなわけないじゃん」
これまた全裸で乳なしのイブちゃんは呆れた顔で神の言いつけ農作業に取り組む振りに熱中しているアダムの側にしゃがんでおります。彼女はアダムの側でしゃがみ続けることが神からの福音だったのですがもうこれは我慢ならんと神に散弾銃をフルスロットルでぶちかましたいと想像するようになっていました。なんて不信者!
「僕は神になることが夢だったんだ」
この言葉は最初こそイブちゃんにはなんて罰あたりお尻ぺんぺんの刑と言わせるに充分でしたが何度も何度も彼はこの言葉を呟くので所詮平民は平民か神にはなれないとごく一般的な理解意識をイブちゃんに植えつけた罪深い言葉なんです。だからイブちゃんは思います。神様ってほんとう罪深い生き物だわねと。
「もうそろそろ俺は神の言葉に逆らうときかもしれない」
アダムとイブの言葉ぐらい神様にはお見通しなのでしょうがアダムは構わず言葉に出します。イブはただ呆れて側にしゃがんでおるのみです。
「さああの丘の上にある果実を食いに行こう」
丘の上のりんごは食べちゃいけない。神様の言葉なんて馬鹿げたもんと二人は共通認識を持っています。だからイブは無視して後ろに付き従いアダムはただただ興奮して丘へと足を進めるのでした。
「シャングリラシャングリラえいえいおー」
そうして丘の上のりんごの樹の下にアダムとイブは辿り着きました。二人はくしゃみをします。イブは不愉快な顔をアダムに向けます。
「ははっなぜか一つしかなっていない赤い赤いりんごを俺は剥ぎ取る」
そうしてアダムは瞬時にりんごを一噛みました。
(美味い…)

そして自らの下半身と目の前で呆れた顔でアダムを見続けるイブの下半身を見て思いました。
(淫行は恥ずべき行為だ。もちろん僕は今までイブに拒否されてきたがだからこそこの純潔を守らなければならない。イブ、君にはイチジクの葉が必要だ。僕が取ってきてあげる、最高級の葉っぱをね)
瞬間アダムが彼に与えられた凄まじき大腿筋をフル活用し走り去っていきました。イブはそれに対して何も出来ませんでした。自らの不出来さに驚いて吐いてしまいました。例え馬鹿とはいえあほな神様の言いつけを限りなく守り続けたイブでありましたので衝撃的でした。イブは神の言いつけを守れなかったのです。
(不覚そして嘔吐)
イブのゲロは限りなく汚いものでしたがイブが神に堕とされてからイブ自身に背負わされてきた気持ち悪いアダムと神の振る舞いによって絶え絶えなく嘔吐を吐ける量がイブの胃に溜まっていたのです。イブの胃は神様によって無際限に作られていたのでした。
イブのゲロはイブ自身はおろか神が与えたくだらない思い込みの楽園を見事に踏み潰しまるでゴミの埋め立て地のような頃合いにしてしまいました。
そうしてしばらくしてアダムが腐ったイチジクの葉を持って帰った時にはそこは新大陸になっていてオットセイがおうおうっと叫んで生活する場となっていたのです。
(ここは確かに楽園のはずだが一体どういうことなんだこれ)
アダムは疑問に思いましたが所詮自分の勘違いだろうと走り出しました。
そうして月日が経ちアダムが全く遠い土地でマンモスに串刺しの目にあっていた頃にようやく神はこの事態に気づきました。
(ちょっと放置しているとお亡くなりになるんだよな。たまごっちでもよくそういう目にあった)
えらく世俗的な神はため息をつきオットセイの下に眠るイブのことを考え始めました。
(全く俺にはひとなど作り出せない。余りに在り得ない存在だ。ここはとにかく大量生産だ。溢れさせて不可能なことを忘れさせてあげよう)
そうして神は次のイブを一億体作り上げて再生した楽園に放ちました。もちろん彼女たち一億体には圧倒的に面積の足りない楽園で瞬時におしくらまんじゅう。血は吐き内臓はぶちかまし汚物にまみれた土地は生き残りもすぐさま余りの悪臭にげろを吐きしきり一瞬で命を溶かしました。
(楽園でなくてはいけない。だが不可能だ。アダムとイブとさえ不可能なのだから。それとも俺の夢は不完全なのか)
旧約聖書をめっためったに捲り考える神様でしたが答えはでません。
(俺には人形がぴったりだ。それ以上の道は考えられない)
そうして神様は楽園を再び再生しその地にアダムとイブの人形を置きました。彼らは機械仕掛けで日中日夜うふふふっと追いかけっこしているだけでまことに神様には幸せな光景でした。
「ここが俺の楽園さ」
神様は楽園の丘の上で空を見つめています。空には鳥が飛んでいて彼らはシャングリラシャングリラ鳴いていたのでした。
(俺にぴったりの鳥の声)
神様はすっかり鳥を気に入りました。
(楽園の名前はシャングリラにしよう)
そうして神様は深い眠りについたのです。自らの思いを果たせたのですから。
(楽園は楽園で在り続ければいい)
それだけが神様の願い。りんごは丘の上に一つだけ生えていて丘の下の草原では延々と男女が戯れている。鳥の声。青い空に白い雲。神の名などそこにはなくただ無垢の世界がそこにはあった。