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ふにゃっ

あの星のふもと、かたちが手を振っている

彼女達の集約

一日一文

君はそこに居て君の認識の中に私たちはいる。少女達は集合写真を撮るべくカメラのシャッターを切った。瞬間彼女達はカメラの中に姿を消した。部室内に鞄と楽器を残し玄関のロッカーには上履きはない。カメラは地面に落ちていた。
七不思議の一つである。そのカメラは所有者である少女の親の元へと帰った。フィルムに写された最後の彼女達の手がかりは笑顔だった。
七不思議など最早昔の話で時代性のある別のものにそういう類は取って変わられている。だがこの事件は何時迄も尾を引くことがなく今も反芻されている。それほどにこの事件は学校を越えて日本中でまことしやかに語られ続けているのであった。
カメラの中に彼女達はいる。最後にみんなで写真を撮って異世界へとメシアとして召喚された。上履きのまま風に攫われて北の国で使役の任に就いたのであろう。
彼女達はカメラの中に囚われた。みんな眠っている。泡の中で夢を見ている。自分たちの続き。消えた彼女達はまだ生きている。多分そうなんだろう。
世界は可能性に満ちている。触れた瞬間可能性は潰える。彼女達に在った可能性。幸せな可能性。カメラを撮る前彼女達は仲違いを起こしていて何とか場を良くしようと部長を務めていた少女が提案したのだ。写真を撮ろうと。
もう離れるしかなかったのかもしれない。何度も何度も喧嘩をして喧嘩もしなくなるほど合わなくなって反吐が出てでもそれぞれは何とかならないのだろうかと胸に抱えていたはず。だから最後の写真には笑顔が映ったんだけど姿は消えた。これが彼女達の精一杯。駄目ならばせめてこの瞬間だけは刻みます。刻まれな彼女達はこれからの可能性を瞬間に費やしたから消えた。写真を撮らなければまだ普通に存在しただろうけれどそれだと駄目だと思ったからこうなった。不思議で不可解なでも確かな事件。少女達は生きている。可能性を集約させただけでフィルムが残る限り永遠にそこにいる。