卵の殻保存同盟

落ちた鈍い殻はとてもおいしい、と思う

第3話 THE SNOW WHITE【GUNSLINGER GIRL】【Vol.1】

GUNSLINGER GIRL , 漫画 一日一話

《あらすじ》
ナポリマフィア首領の裁判に内情を知る証人が必要な為、元幹部マリオ・ボッシを保護する仕事を彼と旧い付き合いのヒルシャーが公社一課から貰い受ける。「妹」トリエラを連れてヒルシャーはナポリマフィアに所属する男から情報を聞こうとする際危険が迫ったもののトリエラに救われる。しかしそれを過剰防衛と判断したヒルシャーはトリエラに注意するがならば早く薬漬けにすればいいと切り返され返答できない。
翌日か数日後か、大人びて賢いトリエラの扱いに手を焼くヒルシャーは出勤中ジョゼに相談する。ジョゼは生真面目なドイツ人が無理しても仕方ないとアドバイスする。
トリエラの部屋に飾られている六人のくまのぬいぐるみをヘンリエッタはうきうきと数えているがトリエラは少々辟易とした様子。好みも関係なく贈り物だけしておけば保護者ヅラできると思っているであろうヒルシャーに思うところがあるようだ。
その日、ヒルシャーに呼ばれたトリエラは二人でマリオが滞在するナポリに向かう。現地で身を抑えられたマリオは逃げないように手錠を繋げたトリエラとトイレをお供する。
ヒルシャーが外で見張り二人以外誰もいないトイレにて個室に籠るマリオをドアの外で待つトリエラはヒルシャーとマリオとのなり染めを聞く。昔ユーロポールの駆け出し捜査官だったヒルシャーはナポリマフィア幹部で闇タバコ経済が立ちいかなくなりアムステルダム経由で合衆国に子供を「輸出」していたマリオを捕まえたものの見逃したという。そのことでマリオはナポリマフィアを抜けて追われる身、ヒルシャーはユーロポールをクビになり公社に拾われたという。トリエラは話のついでに自身の公社前の経歴を知っているかとマリオに聞くがマリオは口を濁す。
落ち着いた会話と自身の重い生理もあり油断していたトリエラはマリオに出し抜かれる。しかし路地裏にて急に現れたナポリマフィアの刺客に捕らえられる。
マリオを追いかけてきたトリエラは彼を捕らえるマポリマフィア達と銃撃戦を演じて見事彼らを撃破する。
腕に傷を負い生理痛に苦しむトリエラはマリオと共に路地裏の家壁にもたれる。トリエラはナポリ検察に出頭すれば苦労しないのにわざわざ娑婆に居残るマリオに理由を聞くとマリオは娘に会う為と言う。
マリオを見逃すことにしたトリエラに最後彼は自身の親がどこに居るか知っているかと聞くとトリエラはアムステルダムで保護されたことぐらいしか知らないと述べる。自身の行いがトリエラの人生に大きく影響していることを悟ったマリオは彼女に詫びを述べて去っていく。その様子を壁に隠れてヒルシャーはしっとりと聞いていた。
人が行き交う街の通りを歩くトリエラは横に並ぶヒルシャーにマリオが逃亡したことを報告する。ヒルシャーは一家の頼まれ事だから問題ない。せっかくナポリまでやってきたから買い物をしようとトリエラに提案し今まで購入しなかった可愛い服を買う話を進めていくがトリエラは今の服が気にいっていると拒否する。それを聞き寂しそうに笑うヒルシャーはいつも何を買っていいか分からないとトリエラに述べる。トリエラは数日後に迎えるクリスマスにいつも通りくまのぬいぐるみを下さいと、実はくまのぬいぐるみに七人の小人の名前をつけていると率直な感情を述べた。
余談。クリスマスの日トリエラには二つのプレゼントが届いた。一つはヒルシャー、一つはマリオ・ボッジ。こうして七人揃うはずの小人は八人になってしまった。やっぱり他のものをねだっておければよかったと感じるトリエラだった。

 

〈概要〉
GUNSLINGER GIRL第三話。
トリエラとヒルシャーを中心とした話。


〈かたちの所感〉
GUNSLINGER GIRLは群像劇。同じ思考と感情を持たない人が一つの作品内に存在して其々の役割をもって作品を揺らす。
三話までの内容は一、二話とGUNSLINGER GIRLの枠組、目に当たりやすい少女を巡るものが書かれていた。第一話ではヘンリエッタ、第二話ではリコ。彼女達のGUNSLINGER GIRLでの生活、其れに欠かせないものが話の進行に接続されていた。
第三話の中心少女トリエラの初登場は第一話六ページ、銃剣を持ち「妹」として忠実に仕事をこなしている姿、GUNSLINGER GIRL内の社会的構成物の一環として現れた。その後第一話内、仕事を終え公社に戻ったあとジョゼさんに嫌われたと落ち込むヘンリエッタにトリエラは話しかけ彼女を励ます個人的な性質を見せる。第二話では洗濯物干しのひととき、一人高く視線の纏まる場所に座りヘンリエッタとリコのお姉さん的存在であることを示している。話も冗談を上手く絡ませて空気が重くならず緩みすぎず良いものに収まっている。
そんなトリエラの第三話。絡むのは「兄」のヒルシャーだ。
第三話冒頭ではなかなか上手くいかない二人の様子が確認される。仕事に忠実なトリエラと其れに注意するヒルシャー。条件付けされた義体たる「妹」はただ其々の任務を全うするだけでなく全生活的に「兄」の危機には全てを投げ出す機能が備わっており(まだこの話まででは言及されていない)、冒頭のシーンでトリエラは忠実に「兄」の危機を救った。しかし「兄」たるヒルシャーはもっと穏便に済ませられるはずだと彼女に注意した。もちろん「妹」であり条件付けのなかで個人の思考及び感情を育むトリエラにその言葉は気にくわない。公社の道具としての役割を受け持つ義体として徹底した条件付けが行われていない彼女にそこまでの行為は毒だ。義体は与えられた状況から逃げる言葉は全て排除される。それでもそのもの自身に備わる言葉は身体の中に潜んでいて、トリエラは無理がきついヒルシャーにせめてもの皮肉を述べる。
「だったら…さっさと私を薬漬けにしたらどうですか?」
ヒルシャーはそんなトリエラに一つ修正を施そうとするのだが彼女自身の顔でヒルシャーを見つめるトリエラを叩くことは出来なかった。叩くのならばとっくの昔に条件付けを厳しくしているから。ヒルシャーには現在の状況で彼女に載せられる言葉と出会えなかった。例えば状況付けされていないトリエラ自身の思考、其れに従えば彼女は当たり前のように公社には存在しない普通と呼ばれる少女の生命に暮らす。しかし条件付け、義体となり公社に存在するトリエラは彼女自身の思考、様々が制限されることがなければこの世に生き残れない道を辿ってきたはずなのだ。死でなく生に選ばれたトリエラは今此処にいる。そしてまた、今条件付け、義体、公社の道具として存在するトリエラは前述のように自身の感情、言葉に示せないものを身体の中に育ませているが彼女自身ではどうすることも出来ない。しかしヒルシャーには可能なのだ。条件付けの中のトリエラ自身の言葉に気づき実行することは可能である一人の大人だ。もちろんトリエラ自身が今此処に存在して小さな幸せを得られるに至った担保、ヒルシャー自身の担保、それを裏切る行為の結果などたがが知れている。そんなものには走らない。ヒルシャーにはなにか目的があるのだ。あるからこそ此処にいるのだ。だからこそトリエラを薬漬けにせず条件付けのなかなんとか自身の言葉を述べるトリエラと戦い葛藤しているのだ。より良いなにか、自分自身のなにかを護るために。トリエラに修正を施そうとして、叩けなかったヒルシャーは「生真面目」ということなのだろう。

 

男の下心に敏感なトリエラに贈られた六つのくまのぬいぐるみ。少々食傷気味な態度のトリエラではあるが彼女はくまのぬいぐるみ一つずつ小人の名前をつけている(白雪姫の小人)。そんな小人たちを数えるヘンリエッタはトリエラのそっけない態度に疑問を覚える。ヘンリエッタにとって贈り物、特に「兄」から頂くものは特別なものであるから、トリエラがどうしてうきうきとした態度を表出しないのか分からなかったのだ。
もちろんトリエラも嬉しくないわけではないが自分の好みも関係なくくまのぬいぐるみばか贈るヒルシャーに思う所があるのだ。贈り物さえすれば保護者ヅラ出来るとも解釈出来るヒルシャーの行為にもやもやとしたものを感じるのだ。もう少し彼のしたいこと、やりたいこと、其れに相応しい行為があるだろうに不器用に同じ贈り物を贈り続けるヒルシャーに否定はしないものの何か行動を適してほしいと考える所があるのだ(彼のやりたいこととはつまりトリエラと上手くいく、「兄弟」として関係の成熟? 少なくともトリエラは言葉をもう少し必要としているがまだヒルシャーにそこまで話す技術はない) 。
トリエラは分かりやすいヘンリエッタとリコの「兄弟」関係をみて自身の立ち位置を考える。ヒルシャーは一体トリエラに何を演じて欲しいのか。娘、妹として他人たるトリエラを選んだヒルシャーは何を自分に望んでいるのか。明確な欲望を掴みづらいヒルシャーの態度にトリエラは少し疲労に似たものを感じている。どうせ自分は道具なのにそれを全てに於いて強制しないヒルシャーにどうせならば全て条件付けしてくれればと心の中で愚痴る。


マリオとの会話にてトリエラは子供には父親が必要…、私が嫌いなのはあなたたちのような身勝手な大人と述べる。
なんら普通にヘンリエッタとリコの姉役に嵌ることが可能なトリエラはヒルシャーとの関係を父親と娘と認識しているのか? 保護者ヅラとも述べているし…。
嫌いなのは身勝手な大人。繕い笑い述べた言葉をヒルシャーもまた壁に潜んで聞いていた。それでも彼はトリエラと上手くコミュニケーションを取ろうと努力する。其れこそ当たり前のように。少し以前より進歩したかもしれない言葉を並べて、少しずつ。 

 

〈その他メモ〉
注視して眺めていると初めてぬいぐるみを贈られたときのトリエラ、贈り物を送るときのヒルシャーが気になってきました。なり染め自体は書いてありますけれど初めて義体として起き「兄」と会ったときの様子なども気になります。

第三話タイトル「THE SNOW WHITE」は白雪姫のことだろう。白雪姫自体はディズニー映画程度のことしか知らないため言及は何もしない。

 

〈第三話で好きな言葉〉
「でも安心して。ほら、緑の血なんか出さないから」
P101 。普通の女の子とは桁違いの動きを見せた義体のトリエラがマリオを安心させるために述べた言葉。

「私が嫌いなのはあなたたちのような身勝手な大人全般なのさ」
P103。ヒルシャーとの関係を誤解されない為に説明したトリエラの言葉。

「クリスマスにはいつも通りくまのぬいぐるみを下さい。実はくまには今まで七人の小人の名をつけていて…」
P105。 いつも何をプレゼントしていいかわからなくてと述べたヒルシャーにご機嫌取りの感も兼ねたトリエラの言葉。

 

〈好きなコマと気になるコマ〉

f:id:sotononaka:20171005120936j:plain

自身の忠実な仕事を削がれて目を曇らせるトリエラ。 『GUNSLINGER GIRL① 第3話 78P』 抜粋

 

f:id:sotononaka:20171005120957j:plain

お腹に手をあてて喉元辺りに少しずつ上がってゆく感情に示唆するトリエラ。『GUNSLINGER GIRL① 第3話 78P』 抜粋

 

f:id:sotononaka:20171005121023j:plain

 顔色が悪いトリエラの体温を確かめようと手袋を脱いだヒルシャー。『GUNSLINGER GIRL① 第3話 87P』 抜粋

 

f:id:sotononaka:20171005121136j:plain

 互いの気遣いの結果クリスマスプレゼントに二つくまのぬいぐるみがやってきてしまい少々愚痴を述べるトリエラ。『GUNSLINGER GIRL① 第3話 106P』 抜粋

  

次回は第4話 エルザ・デ・シーカの死(前編)

  

〈自身への反省〉
一日で書くことが可能な時間配分を少しずつ理解する。
あらすじの書く意味合いを知ろうと努力する。作法もね。