卵の殻保存同盟

落ちた鈍い殻はとてもおいしい、と思う

第6話 A kitchen garden【GUNSLINGER GIRL】【Vol.2】

GUNSLINGER GIRL 、漫画一日一話

 

《あらすじ》
いままで戦闘に関わる描写がなくトリエラと同室、本を読む姿とニヒルなセリフが印象的だっためがね少女クラエス。6話冒頭彼女は義体の効能を調べるための実験体として肉体の強度を確かめる実験に参加している。実験でクラエスは道具のようにただ指示を全うしなければならないが義体らしからぬ緩い行動をみせ指示する男に注意される。そんなクラエスに「兄」が存在した頃の話。
街中に存在する橋に寄せて会話する二人の男。不慮の事故で足を飛ばされて軍を退役したラバロ大尉に公社に所属するジャンは話を持ち掛ける。自身の生き甲斐だった軍警察を志半ばで退役したナバロに公社で三年働けば軍警察の復帰を手伝うと言うジャン。自身の復讐の為手段を選ばず何やら怪しげな組織に関わっていることを知っているナバロであったがジャンの話を了承する。
公社で働くこととなったナバロはフラテッロとなったクラエスに指導する。
幾ら指導しても射撃が上達しないクラエスに手を焼いているナバロに義体を本当の手足のように動かすのには時間が必要、体を動かす特訓として楽器演奏や書き取りをすることを進めるジョン。ナバロはこんな仕事とは聞いていなかったと愚痴をこぼす。
更に姿が見当たらないクラエスは昨日ナバロが演習場で命じた行為を実施続けているはずだとジャンに告げられる。ナバロはまさかと耳を疑いながら雨の最中傘をさして演習場に駆けつけると未だにクラエスは命じた行為に夢中であった。
その日の夜自室にてクラエス義体前の情報を眺めていたナバロの元にシャワー上がりのクラエスがやってくる。ジャンの差し金のようだ。
「兄」の言うことに忠実な義体クラエス、良い兵士になる為の志が身体に染みつきながらも軍から離れてしばらく家庭でできる野菜の育て方と言う本を読むナバロ。ナバロは射撃の練習をしばらく中止して明日は朝から出かけることをクラエスに告げた。
湖にて釣りをする二人は親交を深めていく。
それから二人は何度か湖に足を運んだ。
公社での二人はいつも無口でお互い教官と教え子の役割を忠実にこなしたが何故かいつも湖では会話が進んだ。それが二人の暗黙のルールだった。
射撃訓練中のちょっとしたもつれで仲間を殺害する結果に繋がろうとしたり、少女の寿命関係なしに「条件付け」を行う公社に疑問を持ったナバロは軍警察に復帰することを放棄し公社を辞めて知り合いの記者に会おうとする。
その噂を聞き駆けつけたクラエスにナバロは二つのものを渡す。
一つはナバロの宿舎の鍵。これからは自由にナバホの本を扱って良いと告げる。
もう一つはクラエスが以前使っていた眼鏡。
ナバロは最後に、眼鏡をかけている間はおとなしいクラエスでいてほしい。書き換え可能な命令ではない血の通った約束をクラエスとして公社を去った。
二日後クラエスはナバロが死んだことを告げられる。
主人を失い使えなくなったクラエスを医者は義体の実験体として使うことを提案する。全てを忘れてもう一度公社の役に立ってもらうために。
かつてナバロが存在した部屋にてベットで本を読みながら眠り込んでしまったクラエスは流れる涙を拭いて眼鏡をかける。自身の部屋へと戻る途中シチリアから帰ってきたヘンリエッタを連れて家庭菜園を作ろうとするクラエス
幸せなおチビちゃんの問いにクラエスは私がサミシイかどうかは私が決めるのと述べる。クラエスには料理、絵、楽器、本がある。何よりも遠い昔お父さんか誰かに教えてもらった無為に時を過ごす喜びを知っているからサミシクないのだ。

 

〈概要〉
GUNSLINGER GIRL 第6話。
クラエスの話。

 

〈かたちの所感〉
この話の構成というもの、そんなものはまだかたちに理解は遠いですが、いいものを感じます。
最初の場面、「兄」ではない科学者的ポジションの男がクラエスに命令する場面は実際初めて読んだ時の感覚は思い出せませんが道具である義体個人に情を寄せざるを得ない「兄」に比べて遠い位置の彼が唱える命令はGUNSLINGER GIRLが当たり前のようにやってくることを表出してくるので嫌なものを感じます。どっちにしろ同じことは為されているのに、勝手なことを感じるかたちは少々きぶれています。
しかし戦闘には出ないご様子のクラエスは命令に対して入り込み過ぎない程度の「条件付け」であるよう。少々の命令を施せば実験は達成できるようですから。ただでさえ修理等で薬を多く摂取しているようですからね。当たり前の処置なんでしょう。

 

ナバロとジャンとの密会シーン。復讐の為というのは今後のお話で出てくるので良いでしょう。しかしリコを近くに存在させるジャン、見通しがついているからこそわざわざ接触したのだからまさかそんな話はないでしょうけれどもし交渉が決裂したらどのような態度を取るのでしょうか。こんな界隈に生息したことのないかたちには分かりませんがただ遠ざかるような簡単な話にはなりませんよね?

 

「こんな仕事とは聞いていなかったぞ」と述べるナバロ。私自身GUNSLINGER GIRLというタイトル、少女の表紙の枠に嵌ってこの漫画を読んでいますからその部分に対して自分自身の感覚以上に鈍くなるから気づきにくいんですけれど。軍警察に復帰したいという欲を突かれてやりたくもない仕事を三年間やることとなったナバロ大佐ですが初めて義体をみたとき、またその義体クラエスはどのように選ばれたのか。おそらく公社側、ジャンからの斡旋でしょうけれど。任された仕事ですから少女という部分まで選択の意志なんて存在しないでしょうし。
話の展開や義体として身体の運用を覚えさせるために楽器演奏や書き取りを勧められる場面で半ば呆れた様相を心の中で浮かべているだろうナバロでしょうからこんな仕事っていう部分はどうであれ足りない教官として呼ばれた我が身、まさか教える相手が女の子で、全く上達しない彼女に身体の運用にまで気を回さなくてはいけないという点。思っていた仕事とは少々様相が違うことに述べているのでしょう。

 

ジョンはナバロ大尉のことをどのように考えていたのでしょうか? 心に蟠りを持つナバロに話を持ちかけたジャン。新しい職場、軍の復帰に対する熱意、軍警察時代のジャンとナバロの関係。苦肉の策というほど緊迫とした状況なのでしょうか? 少しだけでもナバロ大尉の手助けにでもなればという感情がジャンには存在したのでしょうか?
義体に関するアドバイス、クラエスにナバロの部屋を訪ねろと述べたジャンには今まで彼に感じていたものとは違う温情の気を感じてしまいます。ナバロ大尉が普通に仕事をしていればなかなかに少女であり義体であるクラエスとは上手くいかないことを知っているジャンの手助け的行為。その行為にはただの業務的行いに少々の気遣いが降りかかっていると考えるのは気のせいではないように思います。

 

ナバロの部屋にてミルクコーヒーを頂きながら本がたくさんあることを呟くクラエス義体になる前は読書少女だったらしいクラエスだからこそ持った着眼点?
ナバロはクラエスに良い兵士になるためにはよく本を読まなければならない、教養と好奇心は必要と説くが今自身が読んでいる本は趣味の家庭菜園の本である。半ば無理な知識を必要とするほどではない現場離れっぷりだからしょうがない。野菜型の宇宙人がやってきたときのためと言う彼の下手な冗談はクラエスの心に何を感じさせたのだろうか。しかし忠実なクラエスは良い兵士になるためならば自分も野菜の本を読むと述べる。もちろん忠実な義体だからこその返事に半ば淡々とそうかと述べたナバロは少々仕事感を滲ませている。

自室でクラエスの情報を眺めているとき、しばしの沈黙のあと射撃訓練の中止を告げたときのナバロの心境はいかほど? ナバロ自身の人生がどのような形成なのかわからないとはっきりとは述べられません。彼が義体としてフラテッロとして接することとなって日が浅いクラエスにどのような位置付けをして接しているのか。軍復帰するまでの変わった形の少女教え子? クラエス義体以前の情報を眺めていたのはクラエスがどのような女の子だったかを知るため? 分かりませんね。

 

釣りが出来ることに少々の喜びを感じているであろうクラエス。そんなクラエスにはっきりと自身が為している行為を告げるナバロ。されどクラエスはナバロが軍警察への復帰まで貴方の脚になると述べる。ナバロは先程の話を聞いていなかったのかと窘めるが。
脚になる。公社の義体として忠実なクラエス、公社として生活は通過点なナバロ。フラテッロの関係を振り返るとヘンリエッタの場合ジョゼがかなり努力して自らをヘンリエッタに合わせて生活、リコはジャンの言う通りに動く、トリエラとヒルシャーは互いにお互いのことを考え試行錯誤しながら切磋琢磨。
自身の生き方が定まっているナバロにとって忠実な「娘」の言葉が余分な言葉だ。それでもナバロはその言葉自体を傷つけることはしない。別に自身に直接害を与える言葉ではないし彼女の言葉の意味を理解しているから。

 

仕事として義体の扱いを覚えさせる為に釣りを選んだナバロ。義体前にはいつも本を読んでいたらしきクラエス。行為に対する勘ににぶいクラエス。自身が良い兵隊としての心構えから外れた本を今読んでいること。自身の生き甲斐はただの心残りでしかなく、過去でしかなく、今は少しずつ無為に時を過ごす喜びに傾き始めているナバロ。ナバロは自身が考える教官としての行いではないメニューをこなす場合に何を考えていたのであろうか。これも仕事のうちと述べるのだがなぜどのようにどうして釣りをクラエスとしようと考えたのであろうか。

 

実地訓練、射撃訓練での出来事。公社の「条件付け」。
公社から出ていこうとするナバロの行為は「条件付け」されたクラエスには理解の外である。
しかし二人の心は触れ合える部分が存在する。
出ていこうと車に乗ろうとしたナバロへと駆けつけたクラエスを見て思い出したかのようにナバロは二つ物を渡す。
一つは宿舎の鍵。この時点では恐らく本など自身から進んで読まないクラエスだろうがナバロはクラエスがかつて本を読むことが好きだった少女であったことを知っている為当たり前に彼女に手渡したのであろう。自由であれば必ず本を読むクラエスであろうから。
もう一つは義体前にクラエスが使っていた眼鏡(しかしきちんと保管してあるものなんですね公社さん)。
もちろん公社の義体であるクラエスには全くもって意味は通じない。「どうしてこれを?」と彼女は聞く。
仕事として教官としてクラエスを一人前に育てようとしたが普段の挙動、釣りをしているときの姿、そして実地訓練での姿。其れを見れば明らかに戦闘行為には向いていないことがわかる。引き金の弾き方を公社の義体として弁えるには難しい彼女自身の性格なのだ。
「この眼鏡をかけてる間はおとなしいクラエスでいてほしい。書き換え可能な命令ではない。血の通った約束だ。Hai capito?(わかったか?)」
「Si,ho capito.(わかりました。)」
「いい子だ」
こうしてナバロは死んだ。GUNSLINGER GIRLであることに囚われず、クラエスのGIRLの部分を自身の瞳に認めていたから。GUNSLINGER GIRLで関わった状況に囚われない年齢と思考と状況が備わってしまったから。

 

幸せなおチビちゃんに寂しさを質問されてもクラエスは全くもって揺るがない。クラエスはおとなしい自分として私として生活することを理解している(のかな?)。なにより無為に時を過ごす喜びを知っているのだ。いつも一人でお留守番、その家を護る傍ら、ただ過ぎていく時との過ごし方を知っているクラエス。それは遠い昔、お父さんか誰かに教えてもらったこと。それがあるからこそ彼女はしっかりと生きていられるのだ。

 

〈その他メモ〉
ナバロ大尉は自身の考えに則り至って普通でしかない少女を無理やり薬漬けにして動かす公社に疑問を保ち知り合いの記者にリークしようとしたため死んだ。教官として普通の女の子でしかない義体少女と接しているうちにその歪みを声にしなければいけないと考えた。其れをしても構わないと思う自身が公社に所属した意味だった。

 

ヘンリエッタの疑問。身も心も破壊された状態で義体となったヘンリエッタはジョゼが会話を始めるまでは必要以外に何もしない少女になっていただろう。だからこそ同情や善行であれ救いたいという感情の上に成り立つ二人の関係、ヘンリエッタの性格。彼女の漫画本編で現れやすい喜怒哀楽は全てやさしく、慎重に積み上げてきたジョゼの思考により成り立っているからこそ、易いからこそヘンリエッタはトリエラやクラエスの「兄」に対する態度に敏感となるのだ。敏感で居なければすぐ消失してしまう部分なのだから。


ナバロ大尉が死んだことを知り機能を失ったクラエスの道を決める三人の大人。望む望まず関係なくとも心など通うはずもない遠さの二人に通じ合うなにか、止まった時間。全てはもう紡がれない。されど今彼女は活かされていて。其々に心に抱える目標、現在地。せめてもの何かを思い描いてなにかを確かにこの瞬間動かさなくてはいけず、動かすこの時ほど好きな瞬間は存在しません。どうであれとも、です。

 

〈第6話で好きな言葉〉
「……野菜型の宇宙人が攻めて来た時役に立つように」P10 自身の言葉と繋がらない行為に整合性を持たせる為なんとか絞り出したであろうナバロ大尉の冗談
「良い兵士になるのに必要なら私も野菜の本を読みます」P11 「条件付け」により「兄」の言葉に忠実なクラエスはナバロ大尉のずれに気づかず真面目に返事。
「引き金というのは良く考えて引かなきゃいかん。公社がどんな命令を出すにしろ作戦以外で力を使ってはいかんのだ」P29 引き金に鈍いクラエスに自身として生きてくれ、GIRLとして存在してくれと述べる前のナバロ大尉。

〈好きなコマと気になるコマ〉

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 関節に痛みを感じたクラエスは命令通りに全力で引けない。痛むことを恐れている?

GUNSLINGER GIRL② 第6話 3P』 抜粋

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密談する二人の後ろに佇むリコは拳銃を懐に忍ばせている。一体ジョゼから何を命じられたのであろうか?

GUNSLINGER GIRL② 第6話 6P』 抜粋

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初めての釣り竿に汗を垂れ流すクラエス。なかなかに戸惑っている。『GUNSLINGER GIRL② 第6話 15P』 抜粋

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興味を示すことが可能な義体との関係とはどのようなものであろうか?『GUNSLINGER GIRL② 第6話 17P』 抜粋

 

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起きて涙を拭きながら実験で傷めた肩を確かめている。『GUNSLINGER GIRL② 第6話 32P』 抜粋

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ヘンリエッタは首にジョゼから貰ったカメラを掛けている。『GUNSLINGER GIRL② 第6話 34P』 抜粋

 

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さみしくて死んでしまうに至る経緯。『『GUNSLINGER GIRL①第1話 33P、GUNSLINGER GIRL② 第6話 35P』 抜粋


次回は第7話Ice cream in the Spanish open space

〈自身への反省〉
もう少し連続してやり切る。