有名な人々

三年後、三年前を振り返り、笑った、僕。

青い鳥

空を自由に飛ぶ鳥に憧れる人間ではないけれど、そんな人間の描写は一つの型として頭に残っている。人間がどういう存在かなんて分からないけれど、誰かが生きているポーズっていうのを時々不自然に掴んでしまう。制御できない昔からのくせ。

窓が開き、カーテンは揺れている。夏のジメジメとした匂い、暑さを増す蝉の声。動けばギシギシと鳴るパイプ椅子に一人の男、季節に合わないスーツ姿。前傾姿の男の顔には汗がダラダラと流れている。地面に垂れた汗には砂糖のようにアリが群がって、溺れている。

暑さなんて関係ないように楽しげな子供の声が蝉の声を割る。二階、真っ白く広い部屋、男は黙って座る。大量の鳥の籠が不規則に並んでいる。それぞれに特徴の違う鳥の羽根が無残に散らばっている。時々男は瞬き、欠伸をする。

開かれた一つの籠に青い鳥が一羽。この部屋に鳥は一匹、人間一人。

「ご飯よー」

閉じられた部屋の向こう側から女の声。男にはなんの反応もない。鳥はバタバタ羽を揺らす。

青い鳥は鳥籠から出ていかない。鳥籠は開いている。青い鳥は自由だ。男は動かない。

時間だけが過ぎていく。日は落ちて夕方。男に夕日がかかる。男にかかる影、認めづらい表情は曇り。眉は苦難。

青い鳥は動かない。日はどんどん落ちていく。ひぐらしの声。からすの声。カエルの声。子供の声。

男は今までが嘘のように立ち上がった。何が男にそうさせるのだろう。男は白い床に落ちた籠を乱暴に握り、開かれた窓から外へ放り投げた。青い鳥は飛翔する。今まではなんだったんだろう。男の顔は見えない。全ての音がやんだみたい。吐息が静かに響く。二階の男だけが音を発す。

日は落ちる。男は見えない。部屋に溶けた。黒い部屋、人間一人。揺れないカーテンの向こうに怪しげな月の光。いつもより一つ多い点は少しずつ動いていく。